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就労移行支援では工賃・給料がもらえないって本当?理由と生活費をまかなう方法を解説

障がいや病気を抱えた方が一般企業への就職を目指す手段として、就労移行支援の利用が挙げられます。
しかし支援を受けるうえでしばしば問題となるのが、サービスを利用している期間中に必要となる生活費の問題です。

就労移行支援では工賃がもらえないので、生活が成り立たなくなってしまうという意見を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
この記事では就労移行支援について解説するとともに、工賃が発生しない理由、就労移行支援と並行して利用できる生活費の捻出方法について解説しています。

就労移行支援とは


そもそも就労移行支援とはどのような制度なのでしょうか?
就労移行支援は、障害者総合支援法に基づいた行政サービスのひとつであり、障がいや病気のある方の就労支援や、社会参加のサポートを目的としています。

サービス利用者は、就労移行支援事業所で一般企業で働くために必要な社会マナーや職務スキルに関するプログラムを受講できます。

就労移行支援の対象になる人

就労移行支援の対象者を厚生労働省では、以下のように定めています。

『就労を希望する65歳未満の障害者であって、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる者』
引用:厚生労働省「障害福祉サービスについて

ここでいう障害者とは18歳以上65歳未満で、精神障がい・発達障がい・知的障がい・身体障がい・難病(障害者総合支援法の対象疾患)のある方を指します。

原則としてサービス利用期間は2年と決められています。
しかし、2年のうちに就職ができなかった場合、申請を行うことで期間を延長できるケースもあります。

就労移行支援にかかる料金

就労移行支援サービスの利用料金は、前年度の収入額によって異なります。
沖縄県における利用料金は以下の通りです。

区分 世帯の収入状況 負担上限金額
生活保護 生活保護受給世帯 0円
低所得 市町村民税非課税世帯(※1) 0円
一般1 市町村民税課税世帯(所得割16万円(※2)未満)
※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム、ケアホーム利用者を除きます(※3)。
9,300円
一般2 上記以外 37,200円

※1:3人世帯で障がい者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象。
※2:収入が概ね600万円以下の世帯が対象。
※3:入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」となる。

就労移行支援で工賃が発生しない理由


就労移行支援事業所ではさまざまな物の製作・加工を行いますが、他種の事業所のような工賃は発生しません。
なぜならば就労移行支援事業所での作業は、スキルの習得が目的であり、「仕事」ではないからです。
しかし例外的ではありますが、責任感と達成感・金銭管理を学ぶという目的で、工賃が発生する作業を行う就労移行支援事業所も存在します。

工賃が発生するのは、就労継続支援事業所での作業です。
就労継続支援とは病気やケガのために一般企業で働けなくなった方を対象に、職務スキルの向上を図るとともに、働く場所を提供する福祉サービスのことを意味します。

就労移行支援と似ていますが、就労継続支援とは対象者や目的などに明確な違いがあります。

就労移行支援 就労継続支援A型 就労継続支援B型
目的 就労スキルの習得 ・就労スキルの習得
・就労機会の提供
・就労スキルの習得
・就労機会の提供
対象者 一般企業への就労を希望する障がいのある方 一般企業での就労が困難な障がいのある方 一般企業での就労が困難な障がいのある方
雇用契約 なし あり あり
賃金 なし 給与あり 工賃あり
利用可能年齢 18歳から65歳未満 18歳から65歳未満 制限なし
利用期間 原則最大2年間 制限なし 制限なし

就労移行支援利用中の生活費はどう確保する?


就労移行支援事業所の利用中は工賃が発生せず、場合によっては交通費や食費も発生します。
利用者の方々は、どのようにしてこの期間の生活費を確保しているのでしょうか?
ここでは、収入源となり得るものをいくつかご紹介します。

傷病手当

傷病手当とは、病気やケガで働くことができなくなった場合に支給される手当金であり、健康保険に加入している方が対象です。

傷病手当は次の就職先で働き始めると支給が終了してしまいますが、就労移行支援を利用開始しても継続して受け取ることができます
ただし次に紹介する失業保険とは併用ができないため、給付期間の確認が重要となります。

失業保険

失業保険とは自身の都合で退職した場合や失業した時に失業手当を受け取れる仕組みであり、正式には「雇用保険」といいます。
傷病手当と同様に再就職に向けたサポートを目的としていますが、傷病手当と失業手当は同時期に受け取ることができません

障がいのある方は「特定理由離職者」としてすぐに給付開始されますが、自己都合で退職した場合は、申し込み後3か月間は失業保険を受け取れない点にも注意が必要です。

障害年金

障害年金は、病気やケガなどで仕事や日常生活に支障をきたす状態となった場合に支給される年金です。

年金と聞くと「高齢者が受け取るもの」といったイメージが先行してしまいますが、20歳から65歳までの現役世代の方も年金を受給できます
ほとんどの病気やケガが対象となり、障がい者手帳を持っていなくても利用可能です。

各種貸付金

これまで紹介してきた給付金だけでは生活が不安だという方は、自治体や社会福祉協議会による貸付金制度の利用も検討しましょう。
給付金とは違い、貸付金は返済の必要があるため、計画的な利用が求められます。

・生活福祉資金貸付制度
・臨時特例つなぎ資金貸付制度
・住居確保給付金

生活保護

世帯収入が国の定める基準(最低生活費)に満たない場合、生活保護を受けることができます。
就職後も収入が規定された額よりも低ければ、継続して受給可能です。

自治体によっては、障害者手帳の有無によって支給額が変わったり、就労移行支援事業所への交通費が支給されたりするため、各相談窓口で確認することをおすすめします。

就労移行支援中にアルバイトはしても良いの?

上記で紹介した制度を利用せず、就労移行支援中にアルバイトをして生活費を賄おうと考えた方もいるかもしれません。
しかしながら、基本的に就労移行支援中のアルバイトは禁止されています。

就労移行支援制度は就労が困難な方が対象となっており、アルバイトができる状態ならば就労訓練を受ける必要がないと判断されることがあるためです。

ただし、ごくまれにアルバイトが認められるケースも存在しています。
アルバイトを行うためには就労移行支援事業所の許可だけではなく、事業所利用料を負担している自治体の許可も必要となります。
仮に認められたとしても、アルバイト時間を指定されたり、多額のアルバイト報酬を受け取ることを禁止されたりなど、条件付きであるケースが多くみられます。

この記事のまとめ

  • 就労移行支援とは障がいや難病を抱えた方が一般企業へ就職するための支援を行う施設
  • 就労継続支援とは異なり「仕事」ではないため、一般的には工賃が発生しない
  • サービス利用中の生活費については、さまざまな手当や年金、貸付制度を利用する手段もある