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令和6年(2024年)介護報酬改定で訪問介護事業者が怒っているのはなぜ?基本報酬引き下げと処遇改善加算を解説

2024年介護報酬改定で訪問介護はマイナス改定と言われています。
実際訪問介護はマイナス改定なのでしょうか?

この記事では、2024年報酬改定による訪問介護の報酬引き下げやその理由、今、訪問介護事業所ができることなどについてわかりやすく解説します。

訪問介護の報酬改定の状況が知りたい方はぜひ参考にしてください。

介護報酬は全体で1.59%引き上げ!

2024年の介護報酬改定。
厚生労働省の発表では、全体でプラス1.59%の改定率となる予定です。

また全体の改定分のうち、0.98%は介護職員の処遇改善に充てられており、人材流出が続く介護現場において、賃上げによるスタッフの意欲向上と人材確保を目的とした引き上げとなっています。
さらに残りの0.61%については、事業所の経営基盤強化を目的とされています。

今期の改定は全体的にはプラス改定ですが、一部ではマイナス改定のサービスもあります。
特に訪問介護は基本報酬の引き下げが予定されており、「まさか下がるとは・・・。」「倒産する事業所も増えるのでは?」との声が上がっています。
では実際に訪問介護の報酬はこの改定でどのようになるのでしょうか?

訪問介護は基本報酬が引き下げられる?

今期の報酬改定で訪問介護の基本報酬は以下のように変わります。

訪問介護の基本報酬の単位数

【訪問介護おもな基本報酬の比較表】

サービス内容 時間 現行の単位 改定後の単位 増減
身体介護 20分未満 167 163 -4単位
20分以上30分未満 250 244 -6単位
30分以上1時間未満 396 387 -9単位
1時間以上 579 567 -12単位
さらに30分増で +84 +82 -2単位
生活援助 20分以上45分未満 183 179 -4単位
45分以上 225 220 -5単位

さらに通院等のための乗り降り介助についても99単位から97単位に減っています。

「参考:令和6年厚生労働省告示第86号page2

基本報酬引き下げの理由は?

では訪問介護の基本報酬が引き下げられた理由はどこにあるのでしょうか?
理由はさまざまあると思いますが、以下の3点が大きく影響していると思われます。

①他サービスに比べて利益率が高い

まず訪問介護は他の介護サービスに比べて利益率が高いと言われています。
令和5年度の介護事業経営実態調査の結果を見ると、

・全サービスの平均収支差益→7.8%
・訪問介護の平均収支差益→2.4%

となっており、確かに他サービスにくらべて訪問介護は、利益率が高いと言えるでしょう。

②処遇改善加算の加算率の高さ

訪問介護の処遇改善加算の加算率はもともと高く今期もさらに2.1%の引き上げが予定されています。
国は今回の訪問介護の基本報酬減について、利益率の高さに加えて、処遇改善加算の加算率を高く設定していることを強調し、全体でプラスになるような経営努力を求めています。

③処遇を改善すべき「介護職以外のスタッフ」が少ない

2024年の報酬改定での報酬引き上げは、特に介護事業所で働くスタッフの賃上げを目的としています。
実際に、今回の引き上げ(1.59%)のうち、0.98%介護職の賃上げ、0.61%を各サービスの基本報酬に振り分けることで介護職以外の賃上げを想定しています。

訪問介護は、介護職の賃上げのため、処遇改善加算では比較的優遇されました。
しかし介護職が少ないためか?基本報酬の振り分けではマイナス報酬となってしまいました。
介護職が少ないことは間違いないため振り分けは少なくとも、マイナスにすることはなかったのではないかと感じます。

訪問介護事業所の実際の状況

以上のような背景などにより訪問介護の基本報酬はマイナス改定となります。
では訪問介護事業所の実際の状況はどのようになっているのでしょうか?

訪問介護の運営状況は良い?利益は上がっている?

2024改定の訪問介護の基本報酬減が、利益率の高さにあると考えるなら、事業所の運営状況は良いのでしょうか?

厚生労働省の「令和6年度介護報酬改定等に向けた要望」によると、ホームヘルパーの有効求人倍率は15.53倍(令和4年度)で、訪問介護事業所の人材不足は非常に悪化しています。
明らかに人材不足は慢性化しており、訪問介護事業所の人員確保はとても難しい状況です。

また東京商工リサーチの調査によると、2023年の訪問介護事業所の倒産は過去最多を大幅に上回る67件に達したとなっています。

また都心部と地方でも違います。
都心部に比べて地方では、一軒一軒の距離があるため一日に訪問できる件数が少なく、さらに燃料費もかかるなど、特に地方の訪問介護事業所が厳しい状況にあるようです。

このような状況を見ても、「訪問介護事業所はどんどん利益が上がっており運営状況は良い」とは考えにくく、利益率の高さが報酬減の理由というのは、かなり厳しい気がします。

処遇改善加算率アップも基本報酬ダウンで実質減

処遇改善加算は、そもそも基本報酬や加算に加算率を乗じることで計算されます。
そのため、今回の改定で処遇改善加算率がアップしましたが、基本報酬が減となっており、トータルで考えると報酬は実質減となります。

確かに処遇改善加算率がアップすることで、介護スタッフの報酬はアップしますが、事業所の利益は減ります。
そして現実的に人員不足となっているのは給与だけの問題ではありません。
人材流出さらには倒産の危機を回避するためには、労働環境の改善や福利厚生、教育など、事業所がすべき課題は山積しています。
このような厳しい状況の中で報酬減では、課題の解決は難しいと考えられます。

今、訪問介護事業所ができること

このような厳しい状況で、訪問介護事業所はどのようにして立ち向かえばよいのでしょうか?
ここからは、厳しいなかで今、訪問介護事業所ができることを紹介します。

処遇改善加算の取得は必須!

訪問介護の処遇改善加算の加算率は最大で24.5%と非常に高くなっており、これは全サービスのなかでもトップ水準です。
さらに今期の改定で処遇改善加算が一本化され、事務負担が軽減するとともに、配分ルールも柔軟に対応できるようになりました。
処遇改善加算は取得しやすくなっているため、できる限り高い加算率の加算を取得しましょう。

未取得の加算取得を目指す

訪問介護には処遇改善加算以外にも加算はあります。
一例を挙げると、

・緊急時訪問介護加算
・生活機能向上連携加算
・中山間地域等における小規模事業所加算
・中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算
・認知症専門ケア加算
・特定事業所加算

などがあります。

また、現加算を取得済みなら今期「口腔連携強化加算」が新設されています。
厳しい状況だからこそ、加算はしっかり取得しましょう。

訪問介護は地域の方の生活に直結する大切なサービスです。
事業所やスタッフのためはもちろん、地域の方々のためにサービス継続を目指しましょう。

まとめ

ここの記事では、2024年報酬改定による訪問介護の報酬引き下げやその理由、今、訪問介護事業所ができることなどについて解説しました。
この記事をまとめると以下のようになります。

この記事のまとめ

  • 2024年の介護報酬改定で全体では1.59%引き上げとなっているが、訪問介護は基本報酬が引き下げとなっている。
  • 訪問介護の基本報酬引き下げの理由は、利益率が高く、処遇改善加算率も高く、処遇を改善すべき介護職以外のスタッフが少ないことが挙げられる。
  • 実際には人材不足や倒産件数の増加など厳しい状況が続いており、事業継続のためには、各種加算の取得など努力が必要である。